株式会社アイティープロデュースは東京に本社を構えるソフトウェア開発企業だ。パッケージソフトではなく、主にウェブアプリケーション —例えばグーグルクロームやマイクロソフトエッジのようなブラウザ上で動くアプリケーションソフトだ— の開発を専門にしている。企業から依頼された社内のITシステム構築及び最適化、包括的なIT支援を行なっている。
全体の8割がRubyやJavaといったコンピュータープログラミング言語を使って開発する他、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)分野も得意としている。RPAとは仮想知的労働者と呼ばれる概念に基づいた自動化技術の一種で、キーボードやマウスの操作を自動化させることによって無人化やコスト削減を実現させ、効率よい業務フローを展開できる。江津市内でも化粧品メーカーや茶葉の製造販売、鉄鋼業などRPAの導入を求める企業が少なからずあるという。小村雄太さん(出雲支社長/情報システム部部長)にお話を伺った。
「私どもが行っているのはこれまで企業さんが使っていたシステム全体をバージョンアップしたり、リプレイスしたりということです。今はこんな風にできますよということが多分にあります。昔で言うと、手書きでやっていたワークフローが電子になったという業務変革ですね。
出雲を中心に事業を行なっていたのですが、江津にサテライトオフィスを構えたのは取引先があったこと、もっと地域に根付いたサポートを充実させていこうという考えからです。江津市内にもIT人材がいることもわかっていたので雇用もできますしね。本社は東京ですが、出雲に支社と開発センター、広島にも支社をもって事業に取り組んでいます。」
▲プログラムを書くことが主な業務なだけにオフィス内は実にシンプルだ。
2021年の夏に江津市からサテライトオフィスへの誘いを受けたという。大田や浜田など石見エリアへの商圏拡大を考えるタイミングと相まって双方共によいマッチングだったと言える。2022年春には入居し、取引先があることから即日稼働している。また、江津市の企業ガイダンスでITスキルをもつ人材をすぐに確保できたという。雇用機会を得たエンジニアの佐々木凌さん(情報システム部)に経緯を伺った。
「東京のIT業界でしばらく働いていました。祖父が体調を崩したことをきっかけに実家の家族のことを気にするようになったんです。自分だけ東京にいるのではなく、地元に戻って家族の近くで暮らそう、という思いが強くなったんですよね。もちろん仕事環境は重要です。江津に帰ってきてすぐに自分のスキルを活かせる仕事が見つかったのは良かったですね。」
▲東京で培ったスキルが即戦力になったという佐々木さん。実家の近くにいれることがなによりだという。
それまでの社内システムがアップデートされ、新たなITソリューションが導入されるとなると、現場サイドからの抵抗感などありそうだが、取引先との関係性は江津市による紹介や仲介が前提にあり、ある程度お互いの理解があった上でプロジェクトが進んでいくので比較的スムーズなやりとりが多いとのこと。今や様々なITソリューションツールが無料で提供されていることもあり、自社製品だけを営業するだけではなく、相手のニーズに合わせて幅広くサービス提供を行っている。例えば社内コミュニケーションツールひとつとっても世の中には驚くほど即導入可能な無料ツールがある。顧客が自社の事業において何を望んでいるのかをきちんと汲み取ることが大切だろう。
江津市側は企業誘致するにあたり、雇用やニーズを生み出すマッチングをどれだけ引き起こせるかが肝だ。いかに江津に進出するメリットを打ち出すことができるか。企業側が業務改善や生産性向上が実感できた、となることで実績が出来ていく。江津には元々IT企業はほとんどないが、時代の変化とともに手書き業務をやめてクラウドサービスに移行したい、リモートワークへの対応を強化したい、TV会議をうまく活用したいというような要望が増えてきた。こういった声を聞く限り地域のIT支援というポテンシャルを感じるという。小村さんはこう続ける。
「都会に出た人が戻ってくる場所がないというのはつまり働く場所がないということですよね。理系の学校も少ないし、地域にIT人材を育てる土壌は元々ない。今後は小学生向けのプログラミング教室を開催したり、江津のITリテラシーを高めるようなことも考えていきたいと思っています。若い人にもっとIT技術に触れてもらう機会を作っていきたいですね。
またIT技術を使ってこんなことができないだろうかといった課題や相談をいただけけると我々も嬉しいです。市内じゃ解決できないと思っていることも地場でできるんです。ぜひ頼っていただきたいですね。」
佐々木さんはオフの日には社会人野球で汗を流す。野球部出身の江津市長がいるチームと対戦することもあるそうだ。〈写真提供:(株)アイティープロデュース〉
生まれ育った町に社会人になって戻ってきた佐々木さんはこれからの江津暮らしに期待を寄せる。
「江津の企業さんや個人の方たちとIT技術を通じたコミュニケーションを増やしたいですね。帰ってきたばかりですし、そうなっていけるとUターンしてよかったなと思えます。仕事だけではなく、江津の人たちとのつながりを増やしていきたいと思っています。」
戸田 耕一郎
本サテライトオフィス取材の他、江津の「人」にフォーカスしたシティプロモーションサイト『GOGOTSU.JP』の運営管理、有福温泉の再生模様を追い続ける『リブート!有福!』を担当。ハートフルな江津市職員のみなさんとともに「江津の今」を伝えるべく、カメラとドローンは常時スタンバイ!